突然ですが、皆さんの多くがLGBTという言葉を耳にしたことがあるかと思います。
ですが、タイトルに記したLGBTQ+という言葉は、当事者以外の方はあまり聞き慣れないかもしれません。
簡単に説明すると…
Qはクエスチョニング=「自身の性自認(自分の性を何と考えるか)や性的指向(どんな性を好きになるか)が定まっていない、もしくは意図的に定めていないセクシュアリティ」を指します。
+(プラス)=クエスチョニングやその他のセクシュアルマイノリティに対しての配慮を示すことを意味します。こちらに関しては何かの頭文字を取っているわけではありません。
そして、現在現役女子大生の作者は実際に性的マイノリティの当事者であり、現在同性の方とお付き合いしています。
ステイホームの呼びかけが続き、そろそろ家での過ごし方もマンネリ化してきた人は多いのではないでしょうか。
そんな皆さんに、今回は実際にLGBTQ+当事者である私から一度は観て頂きたい「ゲイ・百合映画」をご紹介します。
LGBTQ+当事者がおすすめする映画【ゲイ部門】

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それでは早速、ご紹介していきます。
まずは男性同士の恋愛もの、「ゲイ作品」から。
君の名前で僕を呼んで
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ジャンル | 恋愛 |
公開年 | 2018年 |
上映時間 | 132分 |
監督 | ルカ・グァダーニノ |
出演キャスト | ティモシー・シャラメ アーミー・ハマー |
あらすじ
北イタリアでの避暑地での一夏に少年二人の間で繰り広げられる淡くも切ない恋愛模様を切り取った作品です。
17歳のエリオ(ティモシー•シャラメ)は、大学教授である父親の生徒である、24歳の大学院生オリヴァー(アーミー•ハマー)と出会います。
読書、音楽、スポーツなどを通して共に過ごしてゆく中で、エリオとオリヴァーの仲は”友情”を超えたものへと姿を変えてゆきます。
苛立ちを覚えながら、それでも惹かれあう2人の感情の交錯しあう様を繊細に描きます。
感想
暑い夏の日、飛び込んだ近所の川の中で主人公二人は語り合います。
「ここは僕だけの場所だ
本を読みにくる」
「これって最高だ
___何が?
何もかも
___僕たちの関係?」
ひょんなことから、17歳のエリオ少年(ティモシー・シャラメ)は、大学教授である父親の生徒であった24歳のオリヴァー(アーミー・ハマー)と同じ屋根の下で生活を共にするようになります。
当初は反発し合っていた2人ですが、徐々に2人の距離は縮まり、その仲は”友情”を超えていきます。
コントロールの効かなくなった抑制できない感情に思い悩むエリオと、年上ということもあり2人の将来、自分の立場を考えたオリヴァーはエリオと距離を取るようになっていきます。
2人の切ない結末に、何度見ても涙が止まりませんでした。
この「君の名前で僕を呼んで」という題名は、英語では”Callmebyyourname”と書くのですが、どこかいまいち心に引っかかる題名ですよね。
「君の名前で僕を呼ぶ」という行為は、一体何を意味するのでしょうか。
この解釈に関しては、もはや個人的感覚に依るものだと思います。
ぜひ一度皆さんも当作品を観て、このタイトルの意味することについてじっくり考えを巡らせてみてほしいです。
マティアス&マキシム
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ジャンル | ドラマ/ロマンス |
公開年 | 2020年 |
上映時間 | 119分 |
監督 | グサヴィエ・ドラン |
出演キャスト | グサヴィエ・ドラン ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス |
あらすじ
30歳で幼馴染のマティアス(ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス)とマキシム(グサヴィエ•ドラン)。
彼らは、友人が撮る短編映画でキスシーンを演じることになります。そこで交わした偶然のキス。
それをきっかけとして、2人は自身の内に眠っていた互いへの恋愛感情に気づき始めるのでした。
マティアスには、婚約者がおり、当然その感情に戸惑います。
一方、マキシムは、友人同士のという関係性が崩れてしまうことを恐れて想いを告げずにオーストラリアへと旅立つ準備をしていました。
刻々と時間は過ぎ、別れの日が2人に迫ります。キスから芽生えたこの淡い恋心は、運命のいたずら?はたまた必然?
交錯する2人の少年の感情の行き先に目が離せません。
感想
私の大好きなグサヴィエ・ドラン監督の最新作です。またもや監督自ら主演の話題作となりました。
自身がセクシャルマイノリティー当事者であるドラン監督は、先ほど紹介させていただきました「君の名前で僕を呼んで」に感銘を受け、この作品を作ったそうです。
私がこの映画を見て、一番最初に気になったのはドラン監督演じる主人公マキシムの頬にある大きな傷です。
「とても目立つ傷なのに、友人たちは誰も痣のことに触れない。それは彼らがマキシムを受け入れている証拠なんだ。それまで誰も痣を見ることさえしなかったのに、映画の中でたった一度だけそれは起こってしまい、彼にとってとても残酷な瞬間となる。…」
「マキシムの痣は、僕の心にある傷のようなもの。それは、過去数年間、友達がいてくれただけで僕が忘れることができた僕自身の不安や怖れなんだ。」
ドランが監督でなければ、一番最初に解説してしまうことが予測されるほど、インパクトの強い痣ですが、その痣の正体は解説されません。
この作品は、LGBTQ+問題を扱いながら、それに関しては特に追求しない、もはや当然のセクシャリティーとして、個性として自然に描かれているように思えました。
それ以上に、人が人と関わり合う中で、心の奥深くで抱えているコンプレックスに優しく寄り添ってくれるような内容であったことが印象的でした。
実際に、私たちのような若い世代が自身の悩みについて葛藤する様子を繊細に表現するためにドランは作品中に自身の本当の友人たちを登場させています。
まるで彼らと共に生きる友人であるかのような感覚をこれ程までに強く覚えさせる作品は初めてでした。
毎度、ドランの作品は映画鑑賞体験という一定型を面白いくらいの勢いで破壊させ、その先にあるリアルな感情へと我々を辿り着かせます。
特にこの作品を観終わった直後は、「映画鑑賞」と「日常生活」の間の垣根を取り払われたような感覚を覚えました。
また、ピアノの美しいメロディーが随所で楽しめるのもこの作品の魅力です。激しくも、どこか儚さを感じさせる旋律が、彼らの揺れ動く感情の表現をダイナミックにサポートします。
チョコレート・ドーナツ
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ジャンル | ドラマ |
公開年 | 2014年 |
上映時間 | 97分 |
監督 | トラヴィス・ファイン |
出演キャスト | アラン・カミング ギャレット・ディラハント アイザック・レイヴァ |
あらすじ
ルディ(アラン•カミング)とポール(ギャレット•ディラハント)は男性同士のカップルです。
2人は、ひょんなことから偶然出会ったダウン症の少年マルコ(アイザック•レイヴァ)を引き取ります。
素直で可愛らしい彼に自然と愛情を抱き、2人は正式に彼の親権を獲得することを希望します。ですが、やはり裁判はなかなか上手く進行しません。
家族とは?愛情とは?
血縁関係以上に、本当に大事なものは何なのか、深く再考させられる実話を基にした作品です。
感想
正直、あまりにもシビアで心の苦しくなる内容なので、少しばかり覚悟を持ち、心して鑑賞して頂きたいです。
「人は誰でも守られるべきだと言い
その一方で打ちのめされろと言う」
当作品内のセリフ
誰かを救うために作られた法が、時に誰かを殺すことがあります。
「麻薬依存の母親も 他の子と違うことも
あの子が望んだわけじゃない
なぜこれ以上苦しまなきゃならないの?
何も悪くないのに」
当作品内のセリフ
不条理なことばかりの世の中で、「それはおかしい、間違っている」と自らのリスクを冒してでも警鐘の金を鳴らす人を何故に無視するのでしょう。
“普通“を定義することの残酷さをどのくらいの人が理解しているのでしょう。
「ぼくの家じゃない…
ぼくの家じゃない…」
当作品内のセリフ
普段は比較的無口なマルコ少年が必死に訴え、嘆いていたこの言葉が全てを証明していたように思います。
彼が望み続けていた“ハッピーエンド“の景色を見せてあげたかったのは私だけではないはずです。
間違った”正義”が導いてしまった無慈悲過ぎるラストに言葉が出ません。
間違いなく、見る価値のある作品です。
LGBTQ+当事者がおすすめする映画【百合部門】

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さあここからは、女性同士の恋愛もの、百合映画特集に移ります。
ぜひ、引き続き目を通していただければ幸いです。
アデル、ブルーは熱い色
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ジャンル | ドラマ/恋愛 |
公開年 | 2014年 |
上映時間 | 179分 |
監督 | アブデラティフ・ケシシュ |
出演キャスト | アデル・エグザルコプロス レア・セドゥ |
あらすじ
学校の先生を目指す高校生のアデル(アデル・エグザルコプロス)と、画家志望の美大生のエマ(レア・セドゥ)。
偶然路上ですれ違った2人は、一目惚れのような激しい好意をお互いに抱きます。
徐々に距離が縮まっていく2人でした。
しかしとある事件をきっかけに大喧嘩をし、そこから二人の仲は悪化していきます。運命から始まり、急速に惹かれあってゆく女性二人が迎えた衝撃的な結末とは…?
感想
こんなにも辛く苦しい恋愛映画が他にありますでしょうか…。
私自身、自分のセクシャリティーに気づいたきっかけの1つであり、当時あまりに胸を打たれ、初めてこの作品を観た日から一週間程度、なかなかその余韻から抜け出せずにいました。
俳優陣もかなり魅力的です!
鮮やかなブルーの髪の毛がトレードマークのエマ役のレア・セドゥさんは、そのクールなたたずまいに反した時折見せるお茶目な笑顔の可愛らしいこと…。
ずるいです…。
手の届かない画面の中の人物にここまで心惹かれたことは初めてでした。
リアルに恋をしかけました。
そして、驚きなことにアデル役の子は実はそれがそのまま本名だといいます。
彼女のより自然な振舞いを作品内に収めるため、実際にアデルさんの私生活の中にカメラを設置して、大半をアドリブで撮影した為だそうです。
まっすぐな「好き」だけではどうにもならない「現実」という見えない壁の厳しさに胸が張り裂けそうになる一方、愛の尊さについて今一度考えさせられます。
後にも先にも類を見ない非常に観る価値の高いとても貴重な恋愛映画です。
「欲しいの いつもあなただけが
すべてが恋しい 欲しくてたまらない」
当作品内のセリフ
触れたらすぐに壊れてしまいそうな、あまりにも脆い2人の関係に涙が止まりません。
キャロル
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ジャンル | ドラマ/恋愛 |
公開年 | 2016年 |
上映時間 | 118分 |
監督 | トッド・ヘインズ |
出演キャスト | ケイト・ブランシェット ルーニー・マーラー |
あらすじ
舞台は1952年、ニューヨーク。
クリスマスシーズンのデパートの玩具売り場で臨時アルバイトをしていたテレーズ(ルーニー・マーラ)は、娘へのクリスマスプレゼントを買いに来たキャロル(ケイト・ブランシェット)と出会います。
テレーズは送り先伝票からキャロルの住所を知り、もう一度会いたいとキャロルにクリスマスカカードを送りました。その後、2人の仲は親密なものになっていきます。
そして、キャロルには離婚訴訟中の夫がいることをテレーズは知りました。
なかなか思うように上手く進まない美しき女性2人の恋愛模様。雪の降るひどく寒い日、テレーズとキャロルの取った行動とは?
感想
イルミネーションの光が辺りを彩り始めたとある冬の日、町の片隅で芽生えた儚くも美しい小さな恋の物語。
皆さんは、運命を信じますか?
タフで気丈な女性キャロル(ケイト・ブランシェット)が目の奥に秘めるのは脆く弱い光。
一方、控えめで物静かな女性テレーズ(ルーニー・マーラ)が目の奥に秘めるのは恋焦がれる情熱的な光。
冬の寒さで凍えた空気を柔らかく溶かしていくような2人の高揚する思いの儚き行方に胸がギュッと締め付けられます。
さらに、この映画のポイントは2人の服装や髪型にもあります。
どのシーンを切り取っても、ファッショナブルなキャロルとテレーズの佇まいは男女問わず、つい目を惹かれてしまうような魅力を感じます。
特に私は、ルーニー・マーラさんの可愛らしすぎるオン眉ボブカットには胸のときめきが抑えられなかったのを覚えています…!
綺麗な2人の女性とお洒落な街の風景が創出する画面の美しさそのものを味わうのも、「キャロル」の楽しみ方の1つだと思います♪
アンダー・ハー・マウス
出典:Amazon公式サイト
ジャンル | ロマンス/ドラマ |
公開年 | 2017年 |
上映時間 | 92分 |
監督 | エイプリル・マレン |
出演キャスト | エリカ・リンダ― ナタリー・クリル |
あらすじ
数々の女性を手玉に取り、そうした浅い恋愛関係ばかりを築き、日々を過ごしていた屋根の修理工のダラス(エリカ•リンダー)。
ですが、とある日彼女はファッションエディターのジャスミン(ナタリー•クリル)と出会い、熱烈な恋愛感情を抱きます。
すぐに深い関係になる2人ですが、ジャスミンにはフィアンセがいました。
感想
エリカ・リンダ―さんのことをご存知でしょうか!?
…突然すみません(笑)
世界が注目するジェンダーレスモデルである彼女のこの中性的な美しさは、男女問わず誰もを魅了することでしょう。
この作品を観て、一番に思ったのは、キスシーンが多い!
そしてエロい!です。
途中途中、つい顔の火照りを覚えるような濃厚な接触シーンにどぎまぎしながらも、最後まで目が離せませんでした。
ここまで紹介してきた他の作品たちに比べて、「アンダー・ハー・マウス」はストーリーの内容的には特にシビアな要素もなく、サラッと見て、サラッと恋のドキドキを味わえるかと思います。
良くも悪くも、観た後にドッと肩の重みを感じるようなことはありません。
周囲に聞く限り、この作品はLGBTQ+関連の作品の中でも知名度は低いようですが、ぜひ一度この官能的美しさに圧倒される感覚を楽しんでいただきたいです。
きっと、皆さんも思わず息を呑むことでしょう。
まとめ

出典:pixabay
ここには紹介しきれなかった作品もいくつかあるのですが、LGBTQ+当事者の私がその中でも特に皆さんに見てほしい作品を全部で3つ挙げました。
それぞれの作品内に収められた多種多様なメッセージをぜひ、皆さんのフレッシュな感性で受け取っていただきたいです。
そして、最後に。
自身がLGBTQ+の当事者であることを自覚しながらも、周囲の視線を気にかけ、自分のセクシャリティーに思い悩んでいる人は意外と身近にいるものです。
特に、20代前半では私のようにオープンにしている人のほうが圧倒的に少ないように感じます。
誰に惹かれようと、人を好きになる気持ちは平等に尊いものだし、愛し愛される喜び、幸福を感じる権利は誰にでもあります。
こういった作品を観た後に、そうした人たちの気持ちにふと寄り添う瞬間を日常の中に設けて頂けたらなら光栄です。
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